淫靡な蒼い月


真っ白だね。


何もない、何にも染まってない、真っ白な世界。


そう、これが“銀世界”。



この惑星(ほし)の外へ……。


雪に閉ざされたあの部屋で、きみがそう言った。


「連れてって……」


左手薬指に刻まれている跡。


僕にも、きみにも。


それぞれに、別々に。


着崩れた浴衣から覗く細い肩を抱いても、何も変わりはしない。


その美しい顔を覆う長い黒髪を指ですくえば、涙が頬を伝う。


強く惹かれれば惹かれるほどに重なる罪の数。


歓喜と表裏一体の、罪……。


もう、戻れない。


だから、決めたんだよね。二人で。


さぁ、ゆこう。


この惑星(ほし)の外へ。


指と指を繋ぐ、赤い糸。


無垢な白の中に、ゆっくり、ゆっくり、浸透させよう。


僕ときみの“朱”が今、混ざり合う。


……ああ


次に目覚めたら、きっと僕らを縛るものは、もう、ない。


さぁ、朱よ、赤い糸よ。


僕らを、白く埋めてゆけ。


永遠の、旅へ。


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