クランベールの甘い日々 〜クランベールに行ってきます 番外編集〜

王子から恋人へ(2)

 隣のロイドに視線を移すと、幸せそうにスヤスヤ眠っている。

 結衣の父も弟もイビキがうるさいので、男はみんなイビキをかくものだと思っていたが、ロイドは本当に静かに眠る。
 時々寝返りを打つだけで、寝言も歯ぎしりもない。

 基本的にうつ伏せが好きなようだが、横向きになった時、結衣を抱き寄せる。
それがちょっと嬉しかった。

 最初は目を覚ましたのかと思ったが、どうやら無意識らしい。
 普段は布団の端でも抱き寄せているのかと思うと、おかしかった。

 眠るロイドを観察しながら、結衣は今後の事を色々と考えた。

 ロイドのおかげで、自由に日本とクランベールを行き来できるようになったとはいえ、またしても着の身着のままやって来てしまった。
 近いうちに日本に帰らなければならない。

 咄嗟に書き置きは残したものの、あれが誰かの目に触れたら『クランベールってどこだ?』と物議を醸すだろう。
 ワイドショーの格好のネタだ。

 ロイドと結婚するにしても、当分先の事だろう。
 なにより彼の存在を、両親に理解してもらうのに時間がかかりそうだ。
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