空しか、見えない

第20話

 千夏と話し合いたかった。
 なぜ急に、自分には何も言わずにジムを移ってしまったのか、それくらいは、訊く資格があるように感じられた。
 佐千子としては珍しく、自分の方から何度かメールも送り、電話もしてみた。
 けれど千夏からは、どんな返事も返ってこなかった。
 会社の帰り、泳ぐ予定を変え、銀座に向かった。
 千夏の働くショールームの場所なら知っている。ショールームの中へ平然と入っていくのまで考えたが、外で待つことにした。
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