月夜の翡翠と貴方

奴隷として、夜、異なる心と同じ瞳




ラサバと名乗った男は、ベンチに腰掛けると、少しずつ話し始めた。


ハトを追いかけ遊ぶ、娘の姿を見つめながら。

ラサバの隣に座る私はぼうっとスジュナを見つめ、ベンチの前に立ったルトは、黙って彼を見ている。

ラサバはすぅ、と息を吸って、ゆっくりと吐き、言った。


「……スジュナは、……二年前、私が奴隷屋から引き取った娘です」


私は視線をそのままに、目を見開いた。

ルトも驚き、息を飲む。


スジュナが………

あんなに元気な少女が、奴隷だった…?


ラサバは目を伏せながら、心を落ち着かせるように、深呼吸を繰り返していた。


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