ヴァージニティー

2-1*忘れ物

そこにいたのは、背の高いスーツ姿の男だった。

男は口を開くと、
「夜分遅くにすみません。

あの、鷹宮夕子さんはいますでしょうか?」

そう言った男に、
「えっ…?」

朝人は訳がわからないと言うように首を傾げた。

(夕子の知り合いか?)

パタパタと自分の後ろの方で音がしたと思ったら、
「あ、樋口さん」

男の顔を見た夕子が言った。

「えっ?」

(樋口って、誰だ?)

そう思った朝人の心の中を呼んだと言うように、
「今日、って言うか昨日話した新しい人」

夕子が言った。

「…あ、ああ」

朝人は返事をした。

そう言えば、確かそんなことを言っていたような気がする。
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