幕末オオカミ

2. 動悸・息切れ



沖田が出ていって、しばらく……


あたしは蔵の中で、苦無や手裏剣の手入れをしていた。


2年も使っていなかったもんな~……


手裏剣を磨くと、小さなそれに、自分の顔が写った。


『ちゃんとしてれば、まあまあ見られる』


そう言った、沖田の低い声が耳の奥で再生される。


「可愛いだって、可愛いだって~!
くっはぁ~!」


本当は、沖田はそんなこと一言も言ってない。


そう言ってくれたのは、藤堂先生だった。


あたしはそれを都合よく、沖田の低い声に置き換えて再生してしまう。


……何でだろう?


なんで、沖田に少しだけほめられた事が、こんなにあたしを気持ち悪い女にさせるんだ?


「わからん……」


頭をふるふると振る。


あたしがすべきことは、まずここで認められることだ。


忍……いや、監察として、役に立たなきゃ、近藤局長の顔に泥を塗っちゃう。


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