蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~

4.昏い執着




<side.卓海>



絢乃が辞した後。

卓海はため息をつき、片手で目元を覆った。


───胸の中に、得体のしれないドロドロした黒いものが渦を巻いている。

あの、お台場に行った日の夜から・・・。

それは卓海の心を黒く塗り潰し、軋むような痛みとともに卓海の心を切り裂いていく。

卓海はぐっと目を強く瞑った。


絢乃はこれまで、RFPを作ったことはない。

RFPをまるで知らなかった人間が、いきなりRFPを作ろうとは普通は思わない。

・・・恐らく、慧の入れ知恵があったのだろう。

そう思うと、抑えられない怒りが胸に沸き起こった。

秘密保持契約のことは、絢乃にちゃんと言っておかなかった自分にも責任はある。

けれど一度胸を覆った黒い怒りは、止める間もなく絢乃に向かってしまった。


・・・絢乃の、涙に滲んだ瞳が脳裏をよぎる。


< 85 / 190 >

この作品をシェア

pagetop