風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
2.嘘の始まり

Act1.

「あの・・・、やっぱりお言葉に甘える訳には・・・。」

この期に及んでまだ言うか。

本当に頑固だ。

「その話は先程解決した筈だが。
・・・大体、じゃあ今日はどこに泊まるつもりなんだ?」

「・・・それは、ホテルでも探してですね・・・。」

自信無げに答える彼女。

「これからか?今何時だと思ってるんだ?
そもそも明日も仕事だろう?」

「それはそうですけど・・・。」

小さな声でもごもご言いながら、彼女は俯く。


彼女はいつもそうだ。

人に頼ることが悪い事の様に。

自分で何とかしようとして。

彼女のそういう所に時々腹が立つ。


あの後、現状確認のため彼女の部屋に俺たちは向かった。

部屋は散々たるものだった。

天井からの水の浸水は勿論のこと、その水は彼女の部屋の床をも水浸しにしていた。

リビングのテレビは天井からの滴る水で破壊され、壁の張り紙も水を吸って剥がれている有様。

それを見た彼女は茫然自失。

クローゼットの中の服だけは、奇跡的に何も被害を受けていなかったのがせめてもの救いだろう。

勿論、そんな部屋で1日泊まることなど不可能だから、俺は彼女を連れて再び車に乗せた訳だが。



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