××倶楽部

6


────「はあ…………」


 朝の明るい日差しの中を湯気がゆらゆらと上がっていく。

 湯船から溢れるくらいのお湯をはって、ため息を吐き出した。


 私も、社長が好きなのに……


 どう考えても、何度悩んでみても、私があのリオ様とミーナ様を差し置いて社長のナンバーワンになれるなんて思えない。


 この恋、絶対に叶わなそうな気がする。


 悔しいとか、悲しいって気持ちはあるんだけどな……泣くほどじゃないのは最初からそのことをなんとなく理解していたからなのかも。

 社長は素敵すぎて、私なんか相手にしないってことを…………

 思えば、私が今まで好きになった人といえば、通学の時に毎朝すれ違っていた外車に乗ったセクシーなサラリーマン、それから紅茶専門店で真剣に紅茶を選んでいた黒髪の超美形男子、それにショッピングチャンネルに出演していたどこかの会社の社長さんとか…………ああ、我ながらなんて現実味がない人たちなんだろう。


 好きになることが付き合うことと結びつかないような恋愛ばかり。

 だから、この年齢になるまでキスもしたことないんだ。

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