風に恋して

リアの軌跡(2)

執務の合間にレオがリアを探して中庭へと出ると、案の定、リアは噴水近くのベンチで本を読んでいた。

「ここにいたのか」

そう声を掛けて隣に腰を下ろしたものの、リアは何も言わずに視線を本に落としたままだ。

最近少し落ち着いてきた様子のリアは、よく図書館に通っているようだった。それはレオにとっては幼い頃からのリアの習慣で、リアが中庭で読書をするのが好きだということもよく知っている。

記憶がなくても、そういった基本的なところは変わらない。

レオがリアの読んでいる本を覗き込むと、レオにも馴染み深い物語を読んでいて顔が綻ぶ。

「マーレ王国の神話、か」

リアは自分の故郷の神話が大好きだ。水資源に恵まれたマーレ王国の神話は、水の神に纏わる物が多い。リアは幼い頃から飽きることなく何度もその本を読んでいた。

成長してからは落ち込んだときや悲しいときに読むことが多いのだが……

そこまで思い、レオはそっとリアの頭を撫でた。

リアはじっと黙ったままそれを受け入れている。本に視線を落としてはいるが、読んではいないのだろう。先ほどからページを捲る手が止まっている。

風になびくリアの髪。今日は耳元でひとつにまとめてある。その風に含まれる湿気を感じて、レオは空を仰いだ。
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