ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
フォース・トラップ
心に触れる 梓side
「手、繋ぐ?」
遼さんが、何か悪巧みを考えている子供のような顔でそう聞いてきた。
「つ、繋がない……」
そんなのは嘘。本当は繋ぎたい。でもそんなこと、私の口からは言えない。
遼さんへの気持ちに、変化が起こってきていることがバレてしまいそうで……。
「だって運転中だと危ないでしょ」
無責任だけど、心にもないこと言ってみる。
「……じゃあ言い方を変えよう。俺が手を繋ぎたいから貸して?」
今度は艶っぽい表情で言ってくるから、心臓がドキッと跳ねた。
出された手に黙ったまま自分の右手を重ねると、指を絡ませるように繋いでしまう。
「やっぱり梓も繋ぎたかったんじゃんっ」
じゃんって……。そんな嬉しそうな顔して言われると、困る……。
再び遼さんの手から体温が伝わる。それが、寒くなっていた私の身体だけじゃなく、心までも暖めてくれた。それだけで幸せと感じてしまうくらいに……。
手の感触と温もりに目を瞑って心地よさを感じていると、遼さんが手をキュッと握った。
「寝てる? 寝てても構わないんだけど、お腹空かない?」
もうそんな時間? パチっと目を開き、車のディスプレイで時刻を確認する。
もう少しで12時になろうとしていた。どうりで小さくお腹が鳴るわけだ。もしかして、お腹の音が聞こえたとか? もしそうなら、恥ずかしすぎるっ!!
お腹を抱え、そっと遼さんを窺い見る。
「何? お腹すいてない?」
聞こえてなかったみたい。少し安心して、顔を横に振る。
「お腹減った。何か食べよ」
「よしっ決まり。何が食べたい?」
「そうだなぁ……ラーメンは?」
実はお昼にラーメンを食べるのが、子供の頃から大好き!!
何味が好きというこだわりはないけれど、スープまでぺろっと平らげてしまう。
「ラーメンいいねぇ~。俺も好き。次行くところの近くに気に入ってるラーメン屋があるんだけど、そこでいい?」
「うんっ!」
遼さんもラーメンが好きと分かっただけで、一緒なんだと舞い上がってしまそうだった。