僕が君にできること

たとえ私ではないとしても

あなたの表情には壊れそうな寂しさが漂っていた。
誰も気がつかない。同じ想いを抱くものしか。



あなたと交わすキスでわかった。
あなたは私と同じ匂いがした。



四国のロケの間毎晩のように会ってはお互いの寂しさを埋め合った。
抱き合って、キスをして溶け合うほど触れ合った。
あなたは何かを忘れようと夢中でキスをした。
痛いくらい抱きしめ合った。



あなたが誰かを想い私を抱きしめることはわかっていた。


それでもいい____。




それでも私はあなたを求めていたんだ。





夜の藍色の空が少しずつ溶け出し明けていく。
淡い色へと変わる空で一際輝き月が照らした。



静かに起き上がりあなたはベットを抜け窓辺に立った。


「もう行くの?」


私はあなたに背を向けたまま呟く。


「行かないよ。本当は光を放っていない月。輝いている月は本当の姿じゃない、同じだね僕らと。」


細く開けられた窓からは湿気を帯びた冷たい風が入り込んできた。






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