†captivity†(休載)

──8歳 夏



藤崎和歌(ふじさきわか)という名で産まれて来て8年、夏休みに入って数日が経った。

とぼとぼと学校帰りの道を重い足取りで、一歩一歩歩く。

暑い……クーラーがほしい。

クーラー、あいす、かき氷……モヤモヤと揺れ動くコンクリートの道を歩きながら、あたしは思ってしまう。



──プールなんて運動は、滅びればいいのに。



夏といえば海、プール、そんな世間の常識を押しつけないでほしい。

暑い中、あたしの天敵・蜂さんたちから逃げ回りながらも学校に向かい、むさ苦しい更衣室に詰め込まれて着替え、絶対火傷するレベルのプールサイドを、先生達から「プールサイドは走ってはいけません」という拷問紛いな仕打ちを受けながら、当の先生たちはビーチサンダルを履き、熱がる生徒たちに見せつけ、焼かれるような上から下からの暑さに耐えて、いざ入水したら泳げといわれ、泳いでも泳いでもなぜかあたしは進まないし、水は飲むし、鼻に水は入るし、最終的に引き上げられて見せ物にされるのだ。



そんなプールも、あたしの天敵さんだ。
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