ひだまりHoney

タヌキ上司


オフィスはちょうど良い温度に保たれていて、本当に快適だ。

目の前の仕事に集中すればするほど、今朝の喧噪が心の奥底へと姿を隠していく。

「平加戸さん、コピー良いかな」

窓ぎわのデスクで紙切れをひらひら揺らしているタヌキ似上司の姿を確認してから、私は返事をし立ち上がった。

「これを二百部……あっ、ちょっと待ってくれ、日付を間違えている」

受け取ろうとした紙が、机上へと戻っていった。

修正作業を開始した上田係長の薄くなり始めている頭の天辺を流し見てから、窓の外へと目を向けた。

視界いっぱいに無機質なビルが建ち並んでいる。

殆どがオフィスビルだ。

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