それでも、愛していいですか。

大人の女




翌日。

奈緒はいつまでもベッドから出られずにいた。

ぼうっと天井を眺める。

阿久津先生は、本当に奥さんを……殺したのだろうか。

……まさか、まさか。

もし事実なら、そんな重大なことをただの学生に打ち明けるはずがない。

もし事実なら、逮捕されているはずだし、万が一逃亡中なら、死にもの狂いで隠したいはずだ。

それなら。

あの告白は、どういう意味なのだろう。

なにがあったのだろう。

大きなため息ばかりが出る。

それに、孝太郎まであんなことを。

加菜は最初から言っていた。

孝太郎は私のことが好きなんじゃないか、と。

なのに……。

自分の鈍感さに嫌気がさした。

昨日、突然学校から帰宅したことを心配してメールを送ってくれた加菜に、どう返信すればいいのかわからず、とりあえず、

『落ちついたらちゃんと話すから……少し待って。ごめんね』

とだけ返信した。

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