あの加藤とあの課長

雨隠れ

「おはようございます。」

「おはよう。」



家まで迎えに来てくれた課長の車に乗り込んで、出張先へと向かった。


出張先は地方の店舗数件。

ときどき抜き打ちでこうして店舗を視察しに行く。


他部署が行けばって思うけど、接客等表に立つことに関しては、やっぱり私たちが使われる。



「着くまで何時間かかかる、寝てていい。」

「…あ、金曜日、いろいろとありがとうございました。」

「ん? あぁ。」

「おかげさまでゆっくり休めました。」

「そうか。」



そこで会話が途切れてしまったので、私は妙な気まずさと沈黙と戦わなければならなくて。


(…私の負け。)

私はシートベルトに頬を乗せて眠りについた。




目を覚ますと、ちょうど高速のインターを降りたところだった。



「爆睡だったぞ。」

「…いびきとよだれさえクリアしてればノープロブレムです。」

「いびきかいてたな。」



……え。



「嘘!?」



助手席から身を乗り出した私を一瞥すると、課長は口の端を少し上げて言った。



「嘘。」

「……は。」



どこから突っ込もうか。
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