冷たいアナタの愛し方

コロシアムでの攻防

ジェラールたちの両親はウェルシュに暗殺されたと聞いた。

それ以上の詳細は聞いていないが、ジェラール自身も暗殺されそうになって命を落としてもおかしくない傷を負った。

あの酒樽…姑息な手段を使う時だけ頭が切れるらしい。


「お父様…お母様…大丈夫かな…生きてるわよね…うん、きっと大丈夫よ」


自分自身に言い聞かせながら部屋全体がウォークインクローゼットのようなドレスの波を縫って歩いていると、白くてスカートがふわっと丸くふくらんだ可愛らしいドレスの前でオリビアの脚が止まった。

まるでウェディングドレスのように可愛くて、肩は露出していたが…こういった大人っぽくてかつ可愛いドレスをまだ着たことのなかったオリビアは、ハンガーからドレスを外して全身が映る鏡の前に立って身体に合わせてみる。


「可愛い!ねえシルバー、これどう?私に似合うと思う?」


「わん!わんわんわんわんわふっ!」


興奮して吠えまくるシルバーの頭を撫でていると、ドアがノックされた後レティが部屋に入って来た。

ドレスを手に満面の笑みでいるオリビアを見るなり噴き出したレティは、深々と頭を下げると窓際にあるドレッサーを指した。


「ルーサー様から申しつけられました。後で遅れて来るそうなので、先に着替えちゃいましょう」


「うん。じゃあ急がなくちゃ」


メイド服を脱いだオリビアはレティの手を借りて急いでドレスに脚を通す。

レティは本来金茶の髪のはずだったオリビアのまっすぐな髪を見つめてため息をついた。


「色が少し浮き出てますね。コロシアムから戻ったら私が染め直してあげますから」


「ありがとう。ルーサー喜んでくれるかしら。どう思う?」


「お綺麗ですよ。ですけどオリビア様…ウェルシュには本当に気を付けて下さいね」


念を押されたオリビアはこくんと頷いて、鏡に映るドレスを着た自分自身を入念にチェックしていた。
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