桜廻る

二、対面





「ご苦労だったな、雅」


「はい。見に来てくれて、ありがとうございました」





もう夕方になり、空はすっかりオレンジ色に染まっていた。


二人並んで、家に向かう。





「俺の時代には、あんな祭りはねぇからな」





自分もやってみたかった……などと、土方は呟く。


そんな土方に、雅はふふ、と笑ってみせた。





「土方さんの故郷の、江戸のお祭りって、どんなのがあるんですか?」


「そうだな……。花火とか、だな」


「花火……ですか」


「あぁ。総司(そうじ)って奴がいるんだけどよ、そいつ、花火が上がる日は朝一番に早起きして、竹刀持って皆を起こしに回るんだ。……花火は夜だってのに」





ぷっ、と雅は笑う。


土方は、呆れたように言っているが、懐かしそうな……そんな笑みを浮かべていた。




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