溢れる蜜に溶けて
夏の誘惑
次の日の夜。
普段と変わらないバイト。
冷房がやや効きすぎてるせいか、半袖の制服から覗かす白い肌がぷつぷつと小さな鳥肌を立てる。
ポニーテールに結んだ髪が時折揺れてレジを打つのに必死になってたら、背後から声が落ちてきた。
「透ちゃん」
「はい」
「あ~~っ。えっと…」
「?」
同じクラスで私よりちょっと先にバイトを始めた朝比奈くんが、もごもごと口を開いたり閉じたりを繰り返す。
きょとんと首を傾げれば、朝比奈くんが唇に手を当て黒い前髪で照れたように顔を隠した。
お客さんの数も片手で数えるほどになった時間帯。
視線を泳がせれば、朝比奈くんの指と指の間から覗かす薄い唇が上下や左右に動くのは、一目瞭然で…。
息に混じる単語が微かに鼓膜を通り、脳へとうごめくのは知ってた。