恋結び ~キミのいる世界に生まれて~
*第二章*

罪な男


「ね、ね、気に入ってくれた?」


5限目と6限目の間の教室移動の最中。


思い出したように耳元に口を寄せた莉子に、あたしは軽く頬を膨らませた。


「そうっ、そうだよっ!」


昨日のこと!


一言言わせてもらおうと足を止めたあたしの手を莉子が引っ張った。


「ほら足止めちゃ駄目、急がないと!」


次の教科は、遅刻にうるさい化学の岡部先生。

先生が教室に入って来た時に席についていなければ、単位をやらないと初めから宣言している。


あたしはさっきよりも歩く速度を上げながら後悔を口にした。


「…学校で開けておけば良かった」


理人に冷やかされる羽目になったのも、元はと言えば"家に帰ってから開けてね"という莉子の言葉を忠実に守った結果なんだから。
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