恋する季節 *- confession of love -*

*- 5 -*



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お化け屋敷から出ると、もうすっかり夜の空になっていた。
20時を回った空はもう真っ暗だったが、お化け屋敷とは違い、たくさんのライトがランド内を綺麗に照らしている。

彩乃の姿を探すと、その向こうに大和を囲っていた女子たちが視界に入る。
その中には浅海もいて、その姿を確認した美琴はすぐに手を離そうとしたのだが。
がっしりと掴んだ大和がそれを許さない。

むしろお化け屋敷の中よりも強く握られている手に戸惑っていると、大和の視線が美琴に落ちた。

「……嫌? 俺とこうしてるの」
「え、ううん。そうじゃなくて……」
「じゃあ、俺とこうしてるのを見られるのが嫌?」

真剣な大和の瞳に驚いた美琴が、しばらくその瞳を見つめた後キュっと大和の手を握り返す。

「……ううん。嫌じゃない」

浅海の姿を見て、美琴は手を繋いでいるところなんか見せたら傷つけてしまうかもしれないと思った。
だから手を離そうとしたのだけれど……。
でも、これが自分の意思なのだからと思い直す。

さっきみたいに遠慮をしていたら、また大和を傷つける事になってしまうかもしれない。

どちらが大切かなんて……誰を守りたいかなんて、考えるまでもないのに。
そんな強い気持ちを持っていたくせに周りに変な気を回して遠慮していた自分を、美琴が反省する。



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