蓮杖探偵事務所の飄々事件簿

この建物には何かいる

静寂を劈くような悲鳴。

「っ!向こうか!」

暗闇に包まれた廊下を歩いていた夏彦が、瞬時に反応して走り出す。

「やれやれだぜ…!」

顎の無精髭を撫で、耕介もそれに続く。

悲鳴を頼りにしているとはいえ、こんなコンクリート造りの建物の中だ。

悲鳴は反響し、なかなか正確な場所を特定する事が出来ない。

それでも建物内を走り回り、必死に悲鳴のした場所を探す二人。

何とか浴室に辿り着いた時には。

「れ、蓮杖さん、南部さん!」

俊平と冴子が、狼狽した様子で立っているのみだった。

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