東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
2幕 奪ワレタ唇

ー椿sideー

縁談話から1週間ーーー・・・



今宵は中尊寺家主催の夜会。


「とっても綺麗ですよ。椿様」


私の支度を手伝っていた秋は私のドレス姿にうっとりとした視線を見せる。


全身を映す鏡を覗き込み、自身も今夜の装いに満足気な笑みを浮かべる。





煌びやかな時間を過ごすのは久しぶりだった。

お父様が襲われ床に伏してから1年。


中尊寺家全体が極彩色の世界から遠のいていた。






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