魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】

水晶を手に

帰りはグラースとラスの体調を気遣って空の旅となった。

白い馬2頭に引かれた馬車は空を飛び、一路グリーンリバーを目指す。

窓の外に見える景色を見てはルゥと一緒に喜んでいるラスもまた、これからどんどん腹が大きくなって、そして2人目が産まれてくる――


「チビ、グリーンリバーに戻ったら外出厳禁だからな。わかったな?」


「うん、わかった」


「嘘だろ返事早すぎるし。とにかくどっかに行く時は誰かと一緒!これ鉄則だからな」


「うん、わかった」


…昔から返事だけは良すぎる。

良い返事はするくせに約束は守らないラスにほとほとあきれ果てたため息をついたコハクは、クリスタルパレスに着くと、屋上でリロイとティアラを降ろした。


「替え玉はちゃんとうまく働いてるみてえだな」


コハクがぱちんと指を鳴らすと、数分後に屋上に現れたリロイそのままの人形は、風船のように弾け飛んで消えてしまった。


離れ離れになってしまうことを悲しむラスがティアラにひっついて離れなくなってしまうと、コハクは赤い瞳を吊り上げて嫉妬してラスの首根っこを優しく掴む。


「おいこらチビ、これからグリーンリバーに戻って診察受けてじっとする!こいつらにはまた遊びに来てもらえばいいじゃんか」


「そうだけど……ティアラ、旅…楽しかったね。また一緒に行こうね」


「そうね、この国をもうちょっと立て直したらまた一緒に行きましょう。約束よ」


小指と小指を絡めてしっかり約束をしたラスを無理矢理抱っこして馬車に乗せると、馬車の中で待機していたグラースがひっそり笑って肩を揺らしていた。


「魔王の気苦労は絶えないな」


「まあな、チビだから仕方ねえだろ。おいデス、お前は俺がチビの傍に居てやれない間見張り役だからな。わかったな?」


「…………わかった…」



デスの膝の上に乗って指をおしゃぶりしていたルゥが抱っこをせがんで両手を挙げる。


コハクはルゥを膝に乗せて優しい声で言い聞かせた。


「もうすぐお前の弟か妹が産まれてくるからな。いいお兄ちゃんになるんだぞ」


もうすぐ、産まれてくる――
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