愛し*愛しの旦那サマ。

陥落のとき


彼女のそんな寝顔を脳裏に浮かべながらも、その場限りの付き合いだと思っていた。


けれども―…

もうかれこれ一年半。


彼女に付きまとわれている―…


「臣く~ん!」


仕事帰りの金曜の夜、背後から聞こえるのはお馴染みの声。


「……」


気付かないフリをして数m歩くと、


「臣くんっ!」


ダッシュで近付いてきた彼女に腕を捉まれ、引き止められる。


「……何だよ」

「幸代ダヨ」

「見れば判る。というか、見なくても判る」

「え~、嬉しいんだけど~」

「ウザイんだけど……」


あの飲み会の日から数日後、直々に謝罪に出向いてきた彼女こと佐藤幸代。

別に謝罪なんて求めてもいなかったが、まぁ、事が事だし彼女なりに一言伝えておかないと気が済まないのだろう、

くらいにしか思っていなかった自分の読みが甘かった。


それから何かと理由をつけて俺の前に出没してくる。

そして最近は理由がなくても現れる。


しかも、塚本とも裏で繋がっている様子で益々タチが悪い。



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