翼~開け放たれたドア~

披露

「じゃあ行こうか?」

「…うん」

行かなきゃならないのは分かってる。

だけど、あの目が、あの陰口が。

──…私の心のどこかに引っかかって、苦しくなるんだ。



思わず、近くにいた空夜の服の裾をキュッと握りしめた。

前を向いていた空夜がこちらを向く。

「く、うや……」

怖い。怖い。

「…お前……」

空夜は何か言いかけたけど、それは言わずに、

「わっ…」

私を無言で抱き上げた。

わっ…高い。龍也よりも背高いもんね。

「大丈夫だ」

目の前で不敵に笑う空夜。

なんだろう。安心感がある。

「うん」

そう頷けば、黙って歩き出す空夜。

うん、きっと大丈夫だ。

なぜか、そう思えた。
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