契約妻ですが、とろとろに愛されてます

出会い

丁寧にお別れの挨拶をしてテーブルを離れると、店を出た所で立ち止まった。


「えっ……雨が降ってる……」


天気予報のお姉さん、雨が降るなんて言ってなかったよ?


かなり降っている雨を見て、深いため息が漏れた。


「どいてくれないか」


私の背後から少し低めの男性の声が聞こえた。


「あっ!ごめんなさい」


どうやら出口をふさいでしまっていたらしい。


横にずれると土砂降りの雨が私に降りかかる。


「きゃっ!」


慌てて両手を頭の上に置いた直後、驚いたことに私の腰に男性の腕がまわり、屋根のある所まで引き寄せられた。


「すまない 雨が降っていたんだな」


私は腰にまわされた腕の持ち主を見上げる。


襟足に少しかかるくらいのサラサラの黒髪、高い鼻梁、切れ長の目、そしてその瞳はイエローゴールド……不思議な色合いの瞳が強烈な印象を受ける。


こういう瞳をなんて言うんだっけ……そうだ、アンバー(琥珀色)だ。


「あ……」


ビリッと感電したような感覚に私は弾かれたように男性から離れた。


その途端に再び私に雨が降りかかる。


男性からため息が聞こえ、再び引き寄せられる。


「懲りない女だな」


「す、すみません」


今度は濡れないように彼から離れると、深く頭を下げる。

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