彼は私を狂愛した。
3章

信じるということ


しばらくすると慧兒は帰ってきた。



「慧兒…?」



私が玄関に近づくとドア越しから鼻を啜る音が聞こえた。



慧兒泣いてるの…?



ゆっくりと鍵を開けた。



ドアを開けると凄く悲しそうな顔をしている慧兒がいた。



そして慧兒の頬には涙の跡があった。



「…おかえり」



慧兒が泣いているのを初めて見たせいかどうすればいいのか分からなくなり


戸惑ったけれど自然と出た言葉は『おかえり』のただ一言だった。



すると慧兒は私を優しく抱きしめた。



まるで大切な宝物を包み込むように。
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