狂妄のアイリス
第三章「おはかまいり」

少女

 一年前のあの日、帰宅した私が見たものは……


「うっ……」


 強い吐き気がして、私は目を覚ました。

 目を覚ましたはずなのに、まだ闇の中に私はいた。

 瞼を閉じているのか開けているのかわからない暗闇のなかで、私は眠っていたみたい。

 起き上がって周囲を見渡すと、蛍光塗料のアナログ時計が丑三つ時を告げていた。

 この時計があるということは、ここはリビング?

 公園で倒れてから、私はどうしたんだろう。

 とても嫌な夢を見た気がするのに、頭がぼうっとして上手く考えられない。

 蛍光塗料の明かりのおかげか、少しだけ周囲が見渡せた。

 私はリビングのソファーで眠っていたらしい。

 枕の代わりにクッションが置いてあって、その傍らには溶けた氷枕も落ちていた。

 額に違和感があって触ると、そこには冷却シートが貼られている。

 リビングのエアコンは切れていたけど、掛け布団と毛布が体の上に乗っていて、寒くはなかった。

 それどころか、熱い。

 状況的にも体調的にも、発熱していることは間違いない。
< 39 / 187 >

この作品をシェア

pagetop