重なる身体と歪んだ恋情
秋雨

千紗

暦の上ではいつの間にか秋。

気付けば朝夕は涼しい風を感じる。

夜になれば庭で鳴く虫の声も聞こえていた。

あの火事から2ヶ月。

早いのか遅いのか。

桜井の家は奏さんのおかげで立ち退きを免れることになった。

けれど――。


「このたびは……、お悔やみ申し上げます」


目の前でそう頭を下げられ、私も頭を下げる。

私の隣で奏さんも同じように頭を下げた。

桜井の家に住むようになって1ヶ月。


『千紗さん、申し訳ありません』


奏さんが神妙な顔で家に帰って来た。

その声に如月は顔を背け、緑川は深々と一礼すると家をあとにした。

まるで私から逃げるように。

意味が分からず彼を見上げていると、奏さんは重たい口を開いた。


『千里さんが……、貴女の兄上が自殺を図ったようです』


まるで小説の一説のように言葉を読み上げる。

一瞬では理解できなくて「え?」と聞き返す私に、奏さんはもう一度『申し訳ありません』と頭を下げた。

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