Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩

01☩姫は悪魔だったりなかったり☩




☩ ☩ ☩


ガラス張りの近代的な建物。

結構大手の玩具メーカー『ASTRO』


「戻りました。」

外観同様、どこのカフェ?と思われるような前衛的な形のデスクが並ぶ『作業室』に入ると、中に居た面子から「お疲れ様」という声が返された。



「つって、オマエどんだけ道草食ってんだ。」


遅っ、と顔を顰めるのは幸村さん。

黒髪の短髪に低身、いつの腕白野球少年ですかと言った風情で腰に手を当てて怒る。

僕は椅子に腰かけ、久しぶりに着けたきゅうくつなネクタイを緩めてようやく息を吹き返した。


「休憩がてらに寄り道したいって言ったら許してくれたのは幸村さんでしょう?大体、僕を外に駆り出すのが間違ってます。営業の仕事じゃないですか。」


ここ『ASTRO』は食玩やプラモ、フィギアなどをメーカーの要望により製造している。

僕の担当は試作。

営業が持ち込む案を現実可能な商品として形にするのが仕事だ。

近日は軍オタブームの過熱により戦車の1/35スケールモデル、その前は大人気アニメのJK萌えキャラフィギア、小学生の間で話題のカードゲームのキャラフィギア、その前は―――

…オタクなのか、僕は。

増産ラインと違って、最終決定の為されない試作作りは、自由も効くけどかなりセンスやヒラメキの問われる仕事だ。

要求通りの物を作ったとして、相手側の都合で没になる事もある。

そのため世間に出まわらないマニア垂涎の一品、なんて物もこの部屋にはゴロゴロ放置されていたりする。

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