僕らが大人になる理由

歪んだ愛の形



情って、一体なんなんだろう。

それは、人を好きという気持ちとは少し違うの?

恋愛感情は、いつしか情になってしまうの?






「あっつ…」




季節はうつろぎ、8月後半の真夏。

べったりとした汗がうなじをつたう中、今日もお店は忙しかった。

夏はどうも苦手で、しょっちゅう体調を崩してしまうから、ピークの時間帯は少し辛かった。

けれど、光流君も無事出勤するようになったし、紺君との仲も戻ったようだし、あのいじわるな女子大生はやめたし、環境的にはすごくやりやすくなっていた。


ただちょっと最近気になることがある。

光流君の様子が、すこし変だということだ。


「光流君、休憩一緒に行きましょう!」

「一緒に行くって思うじゃん?」

「は?」

「行かないよねーーー」

「じゃあ置いてきますね」

「ちょー、ちょちょ、真冬ん」

「なんですか」

「……やっぱ一緒に行く」

「はあ、そうですか」


今日は平日のランチ営業。

あまり混んでいないので、二人で休憩に入っていいと紺君に言われた。

光流君の様子はどこかぎこちなくて、なんだか気持ち悪い。

最近真面目に大学もいってるらしいし、レポートも出してるらしいし、前期フル単余裕とか言ってるし、女遊びも減ったらしい。

なんだか光流君のアイデンティティーがどんどん無くなっているような気がする。
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