翼~開け放たれたドア~

伝える思い

春輝が無事退院して、我らが倉庫に帰ってきて数時間。

俺らはソファーに座り込んでいた。

雅人たち下っ端が春輝の退院を祝って、サプライズでパーティーを計画していたらしく、倉庫に入ったとたんにクラッカーのテープまみれになった俺たち。

なんで春輝だけじゃなくて俺らまで……。

そんなことを思っていたが、春輝が嬉しそうにしていたからそこは黙っといた。

で、そのパーティーが夜にわたってまで続いて、ぐったりして幹部室に戻ってきた俺たち。

俺は、春輝に総長室へ行くように言った。

ドアを開けて、春輝はきょとんとこちらを見たが、何も言わずにドアの奥へと消えた。
春輝はわかってねぇようだったが、直たちには分かっているらしい。

面白そうに俺を見て笑みを浮かべながら手を振る直。

ニヤニヤと俺を見て楽しそうに笑う秋人。

残りの奴ら…飛鳥と蓮は酒飲んでつぶれたらしく、それぞれのソファーで寝ている。下っ端に運ばせたんだけど起きる気配もなかった。

直は俺よりも酒強いし、秋人はあんまり飲めねぇから自分の限界を超えない程度に飲んでいた。

「……チッ」

未だにひやかすような笑いを浮かべる二人に舌打ちを残し、先に部屋に入っている春輝に想いを伝えるために、俺はドアをそっと開けて中へと入った。
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