エターナル・フロンティア~前編~

第四話 愚弄と滑稽


 イリアはスーパーマーケットの開店と当事に、お菓子の材料を買い込んでいく。今回、ソラにお菓子の作り方を教えて貰わないといけない。だから失敗を前提にということで、対象に買い込んでいく。

 全員に、美味しいお菓子を食べてもらいたい。それに高い評価を貰いたいという気持ちが空回りし、イリアは半分暴走状態に陥っていた。それにより、あれもこれもと次々と選びカートの上に乗せていく。値段に糸目を付けないので、ついつい余計な物まで買ってしまう。

 数十分後――

 スーパーマーケットから出た時のイリアの両手には、大量の荷物が詰められた袋が握られていた。一体、どれくらいの量を作るというのか。イリアの辞書に「加減」という言葉はなかった。そして美味しいお菓子を作ろうと決意しつつ、意気揚々とソラのもとへ向かった。


◇◆◇◆◇◆


 ベッドで横になっていたソラは、イリアの訪問に目を丸くする。以前の出来事を考えると、無視を決め込むことはできない。一方イリアは、以前の出来事を殆ど覚えていないので、外で早くソラが出てこないかと待ち続ける。こうなると、流石に出ないわけにもいかない。

 ソラは眠そうな表情を浮かべつつ、扉を開く。そして盛大な溜息をつくと、イリアの顔を凝視した。その後、ソラは特に言葉を発することはしない。すると沈黙に堪り兼ねたイリアが、先に口を開いた。

「おはよう」

「……うん」

「元気?」

 刹那、ソラの表情が徐々に歪んでいく。そう、今のソラにとってこの言葉が禁句に等しい。それを雰囲気で察したイリアは慌てて取り繕うが、それでソラの機嫌が直るわけがない。

「で、何?」

「入っていい?」

「別に」

 何処か呆れた様子でそのように返事を返すと、イリアを自宅の中へ通すことにした。この場で断ったとしても、イリアは勝手に上がり込んでくる可能性が考えられる。それなら不愉快な感情が湧いてくる前に彼女を部屋に招き入れ、どのような理由で訪ねて来たのか聞けばいい。
< 303 / 580 >

この作品をシェア

pagetop