右隣の彼

実は2人で食事は初めてです。

「おいしい!」
岸田君と入った居酒屋はご飯メニューが豊富な
居酒屋チェーン店だった。

私たちの座った席から賑やかな声があちらこちらで聞こえてくる。
恐らく宴会や合コンの類だろう。
そんな私たちが案内された席は2人掛けの個室というよりは間仕切り
されたような席だった。
女同士で恋バナしたりカップルが座るにはちょうどいいのだろうけど
私と岸田君には・・・ちょっと場違いな席じゃないかと思ったのだが
空腹には勝てなかったと言おうか、岸田君がここで全然良いと言うもんだから
仕方なく座っている。
そして最初のオーダーでかなり注文してしまった私たちのテーブルは
料理でぎっちぎちだった。
「おいしいけどテーブルが小さすぎて乗り切らないよね・・・まだ来てない
料理あるよね」
箸を持ちながら上目遣いで岸田君を見ると生中のジョッキを持ちながら
やたらニコニコしていた。
「な・・なによ。そんなニヤニヤして・・・」
「いや、先輩なら次の料理が来るまでに2皿くらい空けちゃいそう
だから心配しなくてもいいかなって思って」
お腹が減ったと言った割に食べているのはほぼ私だけ。
「何で食べないのよ!2皿くらいとか失礼じゃない?お腹減ったって
言ったの岸田君でしょ?君も責任持って・・・・ほらっ!食べる!」
焼き鳥ののった皿を差し出すとはいはいと言いながらその中の1本を取った。

やっぱりイケメンは得だ
つくねを食べてるだけなのにその姿も色っぽく感じだ。

こうやって岸田君と仕事以外で会うのは初めてだ。
恋愛の相談を受けるのもほとんどお昼休憩だったり
出社してすぐだったり・・・
だからこうやって食事をするのも初めて。
きっとこれが岸田君の素の姿なんだ・・・・
でもますます岸田滋という男がわからなくなった。
私の事を恋愛マスターとか言って持ち上げておいてプライベートは
残念とか言うし、仕事はまだまだと思っていたのに
変なところでリードしてくれたり・・・
そうかと思えば今みたいに食べる姿とかが妙に色っぽい・・・
そして意味深発言連発しておいてしっかりかわいい彼女がいるときたもんだ。

わからん。
全くわからん~
はっきり言って振り回されたくない。
彼女がいるんだからこんなアラサ―捕まえて
暇つぶしは辞めてもらいた。

「ねぇ~私と食事してて彼女に怒られない?」
散々食べた後に言うのはなんだかな・・と思うけど
でも私だったらちょっとやだなって思う。
だが岸田君は焼きおにぎりをパクパク食べながら、全然大丈夫
と食べ続けてる。
それにいつもなら嫌みなくらい彼女の話をするのに今日は全くしない。

まさか!喧嘩したとか・・・たはまた別れたとか?!
心配になって岸田君に聞いてみたら・・・

「もし俺が彼女と別れたって言ったら・・・・どうします?」 
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