右隣の彼

座り心地のよいイスには気をつけよう

何でこういう時に限って仕事が順調なのさ・・・・
珍しく、定時までに私のすべき仕事は終わった。

岸田君とのお約束でルンルンしているんじゃない。
むしろその逆でどんな無理難題を押し付けられるのか怖いくらいだった。
ちらっと横を向けば、お隣さんはもう帰り支度をしている。

早い・・・

きっと彼の場合は今日の事を思えばルンルンなんだろう。
だってお願い事を命令できるんだから・・・
しかし一体どんな事をお願いするつもりなんだろう。

普段しなさそうな事をお願いするに決まってる。
例えば・・・
お金貸して?・・とか・・・いやいやそれはないわ。
だっておごってもらっちゃったぐらいだし・・・
じゃあ・・・
cocoのケーキ買ってきてとか?
あそこのシフォンケーキ超人気があるから並ばないと買えないんだよね~
しかも並んだからといって必ずしも買える訳じゃない。
奴はそういう面倒くさい事お願いするのか・・・

ってかなんか食べ物しか思い浮かばないっていうのもどうなのさ・・・
想像力すらも衰え始めたか?

「先輩?眉間の皺ってつくと取れなくなるって知ってました?」
「へ?」
眉間にしわを寄せた状態で右隣をみると
余裕の顔で私の眉間にしわを指さそうとする岸田くんと目が合い
思い切り仰け反った。
その仰け反る姿をみて今度はフッと笑った。
フッってなによ!
いつもヘタレだった岸田君といつも余裕の顔つきを作ってた私の
立場が逆転している。

「な・・何がおかしいのよ」
「いや・・・相変わらず俊敏な動きに見入ってました。」
どう考えても嫌みにしか聞こえない。
「・・・ところで俺もう準備できてるんで先に例のコーヒーショップで
待ってるます・・」
岸田君は私の返事も聞かずみんなに挨拶して私より先に会社を出た。

私はそれから10分後
何食わぬ顔をして会社を出たが心の中はドキドキのバクバクだった。
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