恋物語。
story.11

危機




―9月。


今日は朱里と会っている。ちなみに今は…カフェでお茶中。




「知沙さー…井上さんと“正式に”付き合うようになってから変わったよね」



「え…?そう…?」


真向かいに座る朱里にそう言われた。
だけど…私には全く検討もつかない。



「うん。……前よりも可愛くなった。」



「っっ…!!」


朱里の発言に飲んでいたミルクティーを口から吹き出しそうになった。



「ちょっと汚い!大丈夫~?」



「え、うん…ごめん、大丈夫…」


私は紙ナプキンで口周りを拭う。




っていうか…っ!!元はといえば、朱里が変なこと言うからでしょ…っ!?




「…だって、ほんとだもん。」



「え…」




待って待って…っっ




「…相変わらず顔に出すぎだから、知沙は。」



「……。」




うぅ…。もっと心に隠せる人になりたいよぉ…。




「…で、話戻すけどさー…ほんとに可愛くなったよ?知沙」



「そ…そんなことないよ…」




だって私は…前との“違い”を感じないんだもの…。
だから、もしそう言うのなら…だたの“錯覚…―。”




「そんなことあるからっ!

知沙は自分のこと、どう思ってるのか知らないけど…井上さんのために“もっと可愛くなりたい”とか“綺麗になりたい”って思ってるんでしょ!?」



「それは…まぁ…思ってる、けど…」




そのために、いろいろ試そうとだってしている…。だって…っ




「それだけで女の子は可愛くなれるの!“好きな人のために頑張ろう”って思えることが…一番可愛いの。」



「……」




そういうものなの…?


今までまともな“恋”なんてしたことがないから…そこの所はよく分からない…。




「でも私、安心したよ~。知沙もやっと“大人の階段”登ったのかぁ~…って。」



「お…っ!!」


朱里の発言に目を丸くした。




“大人の階段…!?”って…っっ!?




「え?この期に及んで、とぼける気…?私を“ダシ”にまで使ってやったくせに…?」



「っ…」


朱里は取り調べをする刑事のようなキツい目で私を見る。





< 82 / 148 >

この作品をシェア

pagetop