君が、イチバン。

幕間



幕間



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四宮は家に着くと、湧き上がる不快感に煙草の煙を思いきり吸い込んだ。
ギリギリ十代の四宮が飲んだのはウーロン茶のみの為勿論酔う筈がない。そのへんは意外に厳しいのだ。主に一条が。
三次会に流れるメンバーに適当に挨拶をして四宮は方向が同じゆかりとタクシーで帰った。


四宮の不快感の理由、それは思い出しても更に苛立つ。

あの後、一気に飲み干した椎那は普段の淡々とした態度が嘘みたいな程よく笑い出した。振り撒く無防備な笑顔。
面白くもない井村の話にいちいち愛想よく答えている。
四宮の一言にすら笑いだす始末。


…あいつは酔うと笑い上戸になる。四宮はハァと息を吐いた。上気した頬に潤んだ瞳、無邪気に笑顔を振り撒けば可愛いくない筈がない。やっかいすぎると四宮は思う。しかし、問題はその後だ。
機嫌を良くした井村がくだらない話を延々話し続けている最中、椎那の横に癖のある話し方をする男が横に座った。


『瑛ちゃん』と椎那が呼ぶその人は、そのルックスとフェミニストな対応、この辺でも有名人で四宮も瑛太という名前は聞いた事があった。

その人が、「この子、借りますね?」と言う有無を言わせない笑顔一言で『まだ飲む』と駄々をこねる椎那を抱き上げたのだ。




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