身代わり王子にご用心
第二章 創立記念パーティー

ショッピングの罠




「えっと……!?」


今、この状況は私にとってあり得ない。目の前にいる人も、サンプルの服も、周りの光景も。


それなのに、隣にいる人はにっこりと笑ってこうのたまいました。


「ああ、やっぱり。あなたにはその色が合うと思いました。女性としての魅力が増すのですから、もっと華やかに装うべきですよ」







目的を知らされずに買い物に誘われたから、桂木さんとともに出掛けた私だけど。制服を着た運転手付きのリムジンが迎えに来る……って。未知の体験に驚いた。


コンシェルジュ付きの高級タワーマンションに一人住まいすることといい。到底スーパーの平社員の収入じゃ(というかたぶん部長クラスだろうと)、無理な生活だと思う。


前々から桂木さんは身なりがいい、って評判だった。メンズ売り場担当の目利きの人が、彼のスーツはとあるブランドのフルオーダーメイド仕立てと値踏みしたらしい。


確かに、そんな物が一介の社員に手が出せるとは思えない。


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