恋は盲目〜好きって言ってよ

拓海サイド

夜中に、ふと目が覚め、暗闇の中で隣り

に彼女がいることを確かめる。


夢じゃない…彼女の温もりを感じる。


体を起こし時計を見ると夜中の2時を過

ぎていた。


彼女と部屋で抱き合ってから眠ってしま

っていたようだ。


横で寝ている彼女の寝顔がかわいくて頬

にそっとキスを落とす。


彼女はかすかに微笑むと、また深い眠り

に落ちていく。



始めて彼女を見たのは電車の中だった…

お腹の大きな妊婦が吊革につかまってい

るのに、座席に座っている奴らは気づか

ない振りをしていた。


見兼ねた彼女が、妊婦の目の前に座る若

い女声をかけて…


「すみません…彼女と席を代わってあげ

てくれませんか?」


「どうして代わらないといけないの⁈早

いもの勝ちでしょう⁈」


ムッとした彼女


妊婦の女性は大丈夫だと言っていた。


「ほら、大丈夫だって言ってるじゃない」


「あなたもいつか妊婦になるのよ。自分

が彼女の立場にたったらどう?大きなお

腹を抱えて揺れる電車の中で、たってい

るのは辛いのよ」


女性は、渋々妊婦の女性に席を譲った。


その時、今時にしたら珍しい人だと彼女

を記憶した…


偶然、取引先に寄ったときにオフィスビ

ル街で彼女を見かけた。


始めは、どこかのオフィスで働いたいる

のだろうと思っていたら101の紳士服店

で見かけ、イキイキと接客している彼女

から目が離せずにいた。

しばらく遠くから見ていると、無理難題

を言うお客にも笑顔で最後まで接客する

彼女。


お客は、『ありがとう…また、お願いす

るよ』と帰って行く。


あの笑顔を独り占めしたい…

その時の彼女の笑顔に一目惚れした…



きっと、好きになる理由なんてどうでも

よかった。

初めて彼女を見かけた時には、もう恋は

始まっていた。


恋なんてしたことがない俺は、自分を納

得させる理由を探していたんだ。


それから、何度か彼女を見かける度行動

を観察した。


まるで、ストーカーだ…


俺と同じ駅で通勤しているとわかった時

は、彼女を見つける楽しみができたと喜

んだ。


遠くから、彼女を見ているだけで満足だ

った…
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