センセイの好きなもの

♢母

夕方。資料室のキッチンと事務所のコーヒーメーカーを片付けると、私の一日の仕事が終わる。

先生たちはまだ仕事があるらしく、パソコンのキーボードを叩く音と、強さを増す雨音だけが室内を満たしていた。
風も強くなっているらしく、時折ヒューヒューと聞こえてくる。



「お先に失礼します」


この雨だからレインコートを着てもずぶ濡れだろうなぁ。
帰ったら少し熱めにお風呂を沸かそう。



「ツムちゃん、もう少し雨が弱まるまで待ってみたら?今どしゃ降りだし」


吉川先生は心配そうに言ってくれる。


「でも今夜はどんどん大荒れになるみたいですよ」


もう少し待ったところで弱まりそうな感じもしないし…。



「ツム、あと10分待っとけ。そしたら仕事終わるから送る」


巧先生はパソコンの画面から目を離さずに、少しぶっきらぼうに言った。
今日は夕飯作る約束はしていないけど、送ってくれるなら何か作ってあげようかな。



「それなら俺も送ってくださいよぉ」


「颯は電車だろ?ツムは自転車だぞ」
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