幸せの花が咲く町で
◆香織

良いことと良くないこと





(きっと、私の考え過ぎなんだわ。
なんでもないことなのよ。)



布団に入り、私は今日あった出来事を振り返っていた。
買い物にお誘いしたのは良いけれど、もしも、堤さんの体調になにかあったらどうしようって、内心はびくびくしていた。
だけど、心配するようなことはなくて……
本当に楽しかった。
一人で行くのとは大違い。
ただの買物なのに、こんなに胸が弾むのはなぜなんだろう?



堤さんと私の趣味は何となく似てる。
それも、嬉しかった。
あの茶箪笥と花台を仏間に置いたところをイメージしたら、それだけでますます楽しい気分が広がった。



(……馬鹿みたい。
他人の家の家具の配置を考えて楽しくなるなんて……)



意地悪な私がそんなことを囁く。
確かにその通りだ。
でも、うちには新しい家具を買うお金も、家具を置く場所もないんだから、他人の家のことでその鬱憤晴らしをしたって良いじゃない。



(あと、小さな卓袱台でもあれば、お茶でも飲みながらほっと出来る部屋になるんじゃないかしら?)



私の脳裏に浮かんだのは、堤さんと二人でお茶を飲んでる光景……
私達はお互いに笑顔で……



そのイメージに、私は急に苛々したものを感じた。



(一体、何を考えているんだろう…
違うのに……堤さんと一緒にお茶を飲むのは、私じゃなくて夏美さん……
そんなことはわかってるのに……)



夏美さんのことを考えたら、今日のことが鮮明に思い出された。


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