西山くんが不機嫌な理由

さくらもちはお好き?






「西山ー。ちょっといいかー」



高校1年生の3学期後半。




放課後、鞄を肩に掛け帰り支度をしていたところ、担任から呼び止めをくらった。



一刻でも早く家に帰ってベッドでくつろぎたいのに、なんとタイミングの悪い。




授業中はよく寝ているけど、だからって担任直々から怒られるほどの心当たりはない。




気怠にその場に立ち止まると、担任が自ら近付いてきた。



その手にはノートが何冊か収められている。




どうしようもない嫌な予感が頭を過ぎり、顔が引き攣る。



「申し訳ないけど、また頼みがあるんだ」

「…………」

「1組の女子生徒が今日とある諸事情で欠席したらしいんだ」

「…………」

「調べたところ、彼女の家に最も近い所にある家が西山の家だった」

「…………」

「おおよそ歩いて15分足らずの距離だから、彼女に授業のノート類を届けに行ってくれないか」

「…………」

「そう、面倒くさそうな顔するなよ」



終始黙って話を聞いていた俺の顔には、しかと"なんだそれ面倒くさい極まりない"が表情に現れていたらしい。




担任が困ったように苦笑しつつ、首を捻る。



今のうちに帰っても構わないだろうか。




だいたい、どうして2つもクラスの離れたよく知りもしない生徒の届け物を、家が近所だというだけで押し付けられなければならない。




その上女ときた。




今日はきっと厄日に……――







言葉を言い直そう。



今日はきっと、絶好のチャンス到来日に違いない。




< 90 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop