私は彼に愛されているらしい
勝者はどっちだ
「…は?」
固まったままの数秒後、ようやく出してくれた声が聞き返しのそれだった。まあそうなるよな。
こういう時は他に言葉は必要ないんだ。だから俺は黙ったまま彼女を見つめていた。頭の中で必死に状況を整理しようとする様子は見ていて少し面白い。
考えて考えて、同じ言葉を繰り返し発して、少しずつ消化していったみちるさんがようやく顔を上げた。
「…いやいや、駄目でしょ。」
「何で駄目なの。」
「だってアカツキくん、まだ若いじゃない。まだまだ遊びたい盛りでしょ?私に合わせる事なんてないよ。」
出た。俺の中での数少ない彼女への不満。
俺を若いと称するみちるさんの考え方はやっぱり好きにはなれない。
「若いって1個下なだけでしょ。来月になったら同い年になるけど?」
「え?アカツキくんって来月誕生日なの?」
「いま掘り下げる話題じゃないよね?」
怒気を含んだ低い声に目を泳がせてみちるさんは口を閉じた。
やっぱり腹が立つ、なんで彼女はこんなに年齢に拘るんだよ。本当そればっかりは意味が分かんねえ。
それとも女ってこんなもんなのか?
「自分はもう27って言う割には、俺にまだ若いとかまだ26とか言う。27がそんなに偉いのか?来年になったら言い方変わんのかよ。」
「違う…そういう訳じゃ。」
「じゃあどういう訳なんだよ。年下だからってなめてんのか?」
「それは違う!それは…絶対にない。」
それだけは譲れないと泳いでいた視線も強い眼差しに変えて俺の方に向かってきた。しかし負けじと応戦する俺の目にも譲れない気持ちが映っている筈だ。