嫌われ者に恋をしました

 (4)雪菜の微笑み


 翌日、出勤してきた雪菜は、昨日のことなど全く感じさせず、完全な無表情に戻っていた。その瞳も漆黒のまま感情は現れず、心を閉ざしているようだった。

「おはようございます」

「おはよう」

 交わした会話はそれっきりで、二人は話すこともなく報告書を作ったり、データをまとめたりして淡々と仕事をして過ごした。

 もう完全に嫌われたな。別にいいけど。

 ……俺は好かれたかったんだろうか。だから飯になんて誘ったのか?

 いや、たぶん昨日誘ったのは、感情が瞳に出ることが分かって、つい嬉しくなって、その時の感情でクルクル変わる彼女の瞳をもっと見たくなったからなのかもしれない。

 もう、見れないけど。……俺のせいで。

 隼人は自分に苛々しながら、パソコンの画面を睨み付けて、報告書の文面を乱暴にバチバチ打ち続けた。

 夕方になって終業時間になると、雪菜は静かに帰り支度を始めた。

 今日は定時で帰るのか。そりゃそうだよな、ここにはできるだけ居たくないだろうし。

 隼人がそんなことを卑屈になって考えていたら、人影がパーテーションから現れてひょこっと顔を出した。
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