青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
雨のことば
雨が、黒い傘に容赦無く降りしきる。
ときおり肩が彼の腕に当たるのを、ドキリと感じた。
学校を出てから、五分。
「……………」
大きな傘の下で、あたしと池谷くんは無言で歩いている。
……流れで、傘に入れてもらっちゃったけど。
な…なにを喋れば、いいんだ…!
よく考えたら、あたしと池谷くんはふたりきりになったことがない。
四人でいるときは、大抵トモと利乃が喋っているから。
池谷くんとあたしは、それにときどき口を挟んだり、笑ったりしてるだけ。
共通の話題なんて、ない。
何を話せばいいのか、さっぱり浮かばない…!
隣を、ちらりと見上げる。
彼は、まっすぐ前を向いている。
…どこを、見てるんだろう。
池谷くんはいつも、どこか遠くを見ている。
その視線の先をたどってみても、なんにもない場所に行き着く辺り、ただ単にぼーっとしてることが多い人なのかもしれない。