美狐はベッドの上で愛をささやく

*・゚☆。・*薔薇の香りは誰のもの?*




 . ゜
。 。
 。





わたしは大きな門構えを抜けて、重たい木戸を開けた。


そこは父とわたししか住んでいない家。


周りは、やっぱりシン、と静まり返っている。


明かりさえも見えない暗闇。


――もう、広間に行っても父の笑い声も聞けない。


あの、皺(シワ)くちゃな優しい笑顔も……見れないんだ。





父を殺したという、とてつもない罪悪感が、わたしの心に宿る。


玄関と繋がっている長い廊下をもう少し歩けば、2階にあるわたしの部屋に続く階段がある。

ゆっくりと階段を上っていく……。


わたしが階段を踏むそのたびに、キシキシと音が響く……。


父がいた頃は、この軋(キシ)みさえもなんとも思わなかったのに、ひとりになったとたん、この音が恐怖へと変わる。


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