嫌われ者に恋をしました

 (6)水族館


 雪菜は切った電話を見つめながら枕を抱き締めて、ベッドにごろんと横になった。

 電話で話をしていると時間を忘れてしまう。こんなに楽しく話が出来た人なんて今までいなかったかもしれない。

 今日は課長、じゃなくて隼人さんが強引な人じゃないことはわかった。私があんな反応をしてしまったから、嫌われたんじゃないかって怖くなったけれど、夜になって電話がきて、普通に話せたからすごく嬉しかった。

 でも隼人さんに、明日はうちに泊まって、なんて言われてしまった。それはやっぱり、そういうことだよね……。王子様だって男の人だもの。

 隼人さんのキスはすごく優しい。キスをされるといつも何も考えられなくなって夢中になってしまう。

 もしかしたら、セックスも違うんだろうか。でもやっぱり怖い。怖いけど、これ以上は拒めない。でも嘘はダメだと言われた。今日、無理にうなずいたらばれてしまったし。

 私を傷つけたら自分が傷つくなんて、そんなことを言われるとは思わなかった。本当に優しい人。

 防犯カメラのことだって、私のせいでいろんな人に迷惑をかけていることが怖くて嫌だったけれど、隼人さんが私を守ろうとしてくれていることがわかって、涙が出るほど嬉しかった。

 あの時怒ってしまったのは、ヤキモチを妬いてくれたから、なのかな。あんなことを言った私がいけなかったんだ。

 私を守ってくれる人なんて、今まで誰もいなかった。嬉しいけど夢みたいで怖い。優しいのは最初だけなのかもしれない、なんて考えてしまう自分が嫌になる。
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