聴かせて、天辺の青
(7) 未来を描いて
◇ 曇った空
温泉なんて来るんじゃなかった、とは思わない。だけど、どうして……という気持ちが渦巻いてる。
『彼はブルーインブルーのサポートメンバー』
『キーボードのヒロキ』
麻美の言ったことが、いつまで経っても頭から離れてくれない。
真偽なんて、どっちでもいい。
そんなことよりも私にとって、もっと重要なことがある。
行きと帰りでは、車内の空気はまったく違ってしまってる。行く時にはあんなに弾んでいた会話が嘘のように途切れて、車内は沈黙。
彼の笑顔を返して。
私が願うのは、彼の笑顔。
ほつれてしまった糸を、どう始末しようか。何と声をかければ戻るのだろうと、ただ迷いながら私は車を走らせるだけ。
あの後、和田さん達に連れられて何杯かビールを飲んだらしい。ほんのりと赤く染まった彼の顔は、車に乗る時に見たきり。
彼は助手席側の窓から、川辺を眺めたまま。こちらを見ようともしない。
実際に彼が景色を眺めているのかさえ、私からはわからない。寝ているのか起きているのか、息をしているのかさえ。
ずいぶんと長い沈黙に息苦しくなってきて、もう限界。
何か話そう。
何でもいいから。