恋はしょうがない。〜初めての夜〜 + Side Story ①&②
恋はしょうがない。〜初めての夜〜

体育大会


 



9月の爽やかな、抜けるような青空のもと。
そこではもうもうと砂煙をあげ、騒然とした戦いが繰り広げられていた。


その中で、一つの存在が見え隠れし、まるでそこだけ輝いているかのように際立ってくる。


その存在に、真琴はただじっと切ない胸の鼓動を伴いながら、視線と心のすべてを投げかける。



寝ても覚めても、真琴を捉えて離さない人――。

何にも代えがたく、この上なく大切な人――。


それは、真琴の伴侶、愛しい古庄だ。






「こら!もう勝負はついてるぞ!!もう、やめろ!……うわっ!!」


過剰に戦いを続けようとしていた騎馬に走り寄って、止めようとした古庄の上に、裸の男子の集団が崩れ落ちてきた。


テントの下から事の次第を凝視していた真琴が、思わず立ち上がる。

男子たちの下敷きになった古庄は、終了の合図がなってしばらくして、ようやく立ち上がった。


砂まみれにはなっているが、無事みたいなので、真琴はひとまずホッとして腰を下ろす。


体育大会の騎馬戦には、男性教員の全員が審判に駆り出される。
古庄は他の男性教員と共に、やれやれといった感じで勝敗の判定をする場に整列した。


その古庄を狙って、写真部員たちが大きな望遠レンズのカメラを向ける。

しきりにシャッターを切ってはいるが、個人的に古庄のファンなのだろうか?



「…やっぱり、古庄先生を撮ってるの?」


話しかけられて、写真部員の女の子はカメラから顔を離した。


「はい。たくさん頼まれているんです」


「頼まれてる?」


「写真部の企画なんですよ。『あなたの好きな人の写真撮ります』って」


「へえぇ~…」


恋を応援するような面白い企画に、真琴は素直に感心した。
でも、誰が古庄の写真を依頼しているのか、少し気になるところだ…。




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